2021
May

11

日本の防衛産業基盤

成長の阻害要因とチャンス

日本の防衛産業基盤は将来に向けての大きな曲がり角に来ています。日本に対する脅威は増大しているものの、防衛企業の受注は減少、そして装備品やシステムの海外依存が増えています。

例年6~8社の日本企業がリストアップされていた米国のDefense News社の世界別防衛企業トップ100の調査では、2020年にリストアップされたのは1社だけでした。具体的な改革や人々の意識が変わらなければ、日本の産業力を維持することはできないのではないかという懸念が高まっています。    

何十年もの間、日本の防衛産業は外国製の装備品をライセンス生産したり、国内開発した装備品やシステムを防衛省に納入することだけを行ってきました。しかし長年にわたり輸出が禁止されていたため、防衛産業・技術基盤は、外国からの干渉や競争から守られていました。

2014年に防衛装備品の移転に関する政策が改定されましたが、これまでのところ際だった変化は起こっていません。地域の安全保障状況が比較的安定していた時代には、自衛隊の装備品が、機能性能に比して高価格であっても容認されていましたが、もはやそのようなことが容認される状況ではありません。

日本周辺の安全保障状況は、近隣諸国が高度な防衛能力の増強を引き続き行っていることから、より困難な状況になりつつあります。限られた防衛予算、最先端の防衛システムの海外からの直接導入、そして日本の防衛産業が世界の防衛コミュニティから依然として孤立していることは、日本の国防を着実に低下させています。

日本の小規模な企業は防衛に仕事を見つけることができず、大企業の中にも防衛から撤退した会社があります。日本には防衛を専門にした企業はなく、一般の大企業の一部で防衛の仕事をしているのが実態です。そのような企業では、防衛ビジネスへの投資や関連する輸出を優先的に考えていないのが現状です。 

何ができるのか?

何もしなければ、輸入システムへの依存度はますます高まり、日本の能力はさらに低下してしまいます。課題によっては、自身で解決できるものもあります。例えばサプライヤーの整理や民生産業からのサプライヤー誘致、合併・買収、新しいコンソーシアム設置や国内有力企業育成のための再編、国際的な防衛企業からの国内投資呼び込み、さらには対外的な防衛投資オプションなどが必要になるかもしれません。

最大の課題は国外に対する取り組みです。強い競争力を持つ防衛産業は、世界で仕事しています。日本政府は、政策と規制、特に情報セキュリティと装備品移転に関して、企業が行うこのような努力を支援する必要があります。政策の見直しだけでなく、輸出戦略によって、共同プログラムや日本企業の海外投資を促進しなければなりません。日本の防衛企業は国際社会で活躍するプレイヤーとなるべきです。

今回のウェビナーは、日本の防衛産業基盤が抱える問題点とその解決策を探るシリーズの第一弾として開催されます。

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